彼との色々な思い出を思い出し、色々な事を思い、また、これからのブログをどうするか?色々な事を考えた台湾だった。

 そんななか、とても気持ちが穏やかになったというか、気持ちが優しくなれた出来事があった。

 一人、台北駅付近で買い物をしていると、若い男の子が二人仲良く歩いていた。一人の男の子が、もう一人の男の子の腕を掴むような掴まないような中途半端な感じで歩いていた。

 きっと彼は手をつなぎたかったんだろう。でも、やっぱり出来ない。そんな雰囲気だった。

 僕はなんとなく彼たちを目で追ってしまった。大好きな人、男も女も関係なく大好きな人。そんな人と手を繋いで歩くことはとても嬉しいことだと思う。

 口に出すことは無かったけれど、心の中で「ガンバレ」と手を繋ぎたがっているであろう男の子にエールを送った。

 すると、手を繋ぎたがっているであろう男の子ではない方の彼が気づき、ニッコリ笑うと手を繋ぎたがっている男の子の手をギュッと握った。

 繋ぎたくてモジモジしていた男の子の嬉しそうな顔がとても印象的で、満面の笑顔を彼に向けていた。そしてその彼も、優しい微笑を彼に向けていた。

 とても幸せそうで、僕はヨカッタと思いながら彼らから目を離し歩き出した。

 台北駅という人が沢山いる中で、彼らが手を握って歩いても大して気にする人なんてほとんどいないだろう。

 でもでも、きっと当の本人たちはちょっと考えている。

 『僕たち大好きなんだけど、男同士だから手を握っちゃまずいかな?』

 そんなことを考える。僕も当時、沢山考えた。街中で彼がギュッと握ってくれた手を何度も解いたこともあった。

 そんな時、彼はちょっと寂しそうな顔をした。でも彼からの愛以上に、僕は世間の目を気にしていた、要は人目ばかり気にして、自分を愛してくれる人の気持ちを考えていない自分勝手な人間だった。

 でも彼は諦めることなく、何度ほどいても隙あれば手を握ってくれた。そうしているうちに僕は彼が手を握ってくれても解くことをしなくなった。

 今でも彼の手の温もりが恋しくなる。指が太い大きい手で、一年中ちょっと湿っていて、
ギュッと握ってくれる彼の手が大好きだった。

 「お前の手はいつ握ってもサラサラだな」
 「(彼は)いつもペトッとしてるよね」僕は笑いながら言った。

 「嫌か?」
 「全然」

 彼はズボンでゴシゴシと手を拭いた後、ニッコリ笑って僕の手を握った。

 「拭いたってすぐペトッとするんだから」僕は笑った。
 「一応な。お前の手がサラサラ過ぎるんだよ」

 「でもお前の手って小さくて、男の手って感じがしないよなぁ」
 「そう?」
 「俺は柔道やってたからタコだらけで握り心地が良くないだろ?」
 「僕はこの(彼の)手、好きだよ」

 彼は少し照れたように僕に笑顔を向けた。


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 彼と台湾を旅していたとき、すぐに仲直りしたが一度だけ口喧嘩をした。理由は彼のヤキモチ。以前にも書いたことがあるが、とにかく彼はヤキモチ焼きだった。

 人だろうがモノだろうが、とにかく一緒にいても年がら年中ヤキモチを妬いていた。

 それは中正紀念堂という台湾の歴史的建造物を見学した時の出来事。中正紀念堂とは中華民国(台湾)建国初代から第5代にわたって総統職を務めていた蒋介石を顕彰するためにたてられた建築物。白い壁に紺碧の瓦がとても美しい巨大な建築物。

 この中に、蒋介石のこれまた巨大な銅像があるのだが、その銅像の前に台湾の陸海空軍のエリート将校たちが2名ずつその銅像を警護している。その2名の衛兵は1時間事に交代するのだが、警護中は微動だにせず、それは見る者を驚かせる。そして、その一時間事に行われる衛兵の交代式がまた素晴らしい。

 一糸乱れることなく行進してくる衛兵。今まで警護を行っていた衛兵も監視台から降り、持っている銃をまるでバトンの様にクルクル回したりと、独特の交代式を見ることが出来る。

 この警護に当たる将校たちは各軍のエリート中のエリートらしく、それは精悍な顔立ちでとても格好いい。

 何となく読んで下さっている方々もピンと来たかも知れないが、そう、彼はこの衛兵にまでヤキモチを妬く始末。

 僕は一糸乱れることなく行進してくる彼らをジーッと眺め、凄いなぁと思っていた。確かに行進してくる衛兵も監視台にいる衛兵も、今で言う「イケメン」である。そりゃそうだろう、彼らはエリート中のエリートなのだから。天は二物を与えずと言うが、そんなことは無い。二物も三物も与えてるなぁと思う。

 確かに見ていた僕も、「格好いいなぁ」とは思ったが、これはもう全然次元の違う「格好いい」であって、付き合いたいとか好きだとかそう言うのとは全然違う。ある種、憧れのようなレベル。

 大体、僕には大好きな彼がいて、こうして結婚までしているんだから、衛兵の彼らを見てどうこう言うのは全くない。

 それでも彼はダメ。絶対ダメ。

 「ケイタロウ、行くぞ」
 「え〜もうちょっとで終わるよ」
 「いいから行くぞ」

 彼は僕の腕を引っ張る。僕はふくれっ面で彼に言った。

 「もうちょっとで終わるのに」
 「ダメ」
 「何で?」
 「何でも」
 
 彼はこういうところは本当に子供っぽかった。言い出したらきかない。

 「もう!なんでそんなことにまでヤキモチ妬くのっ!馬鹿馬鹿しい」
 「馬鹿馬鹿しいとはなんだ!」
 「折角、台湾まで来て観光してるんだよ。日本じゃ見られないんだよ」
 「だめ。やっぱりヤダ」

 「ケイタロウは俺だけのものなの!」
 「誰も取りゃしないよ。僕なんて…」
 「そんなのわからないだろ。お前は自分が解ってない!」
 
 「あのね(彼が)思うほど、僕、全然イケてないしモテないから心配しないで」
 「ケイタロウが俺以外の人を見るのもイヤなの!」

 「…」
 
 もう、これはケンカにもならない。一方的にダメなんだから…。こんな言い争いを何度したかわからない。他の事に関しては全て僕の思うとおりにしてくれたが、この件に関してだけは頑として譲らず、とにかくすぐヤキモチを妬いてふてくされた。

 ただその後、僕が不機嫌になると、彼はいつも僕にちょっかいを出してきて僕の機嫌を伺った。

 「なぁ、そんなに怒るなよぉ」
 「知らない!」
 
 彼はしょんぼりしていた。自分でもわかっているのにどうしても我慢できないようだ。彼の妹さんにもことある事に言われていた。

 「あんまりケイタロウ君を縛ると嫌われるよ」

 まぁ、僕にしてみればとっくに許している訳で、ちょっとは反省しなさい的な意味でふてくされているだけ。

 これでしばらくは大人しくしてくれるといいんだけど…と思って毎回怒るが、全然改善されない。もうこれは僕の貧乏性と一緒で諦めるしか無いレベル。

 折角、彼と一緒に来ている旅行。想い出は楽しい方が良いに決まっている。いい加減許してやるかと、

 「もう、変なヤキモチ妬かないって約束する?」どうせ守れないだろう約束を言うと、
 「するするする。何でもする」

 もう、この場当たり的な返事の段階で「そんな約束出来ません」って言っているようなものだが…。

 「そんじゃ許してあげる」
 
 すると彼は嬉しそうにニッコリ笑い、僕の肩を抱いて顔をのぞき込む。

 「ホントに怒ってない?」
 「もう怒ってないよ」
 
 彼は僕の頬にキスをすると、

 「さ、そんじゃ次は何処行く?」

 さっきまでのしょんぼり顔は何処へやら、彼は嬉しそう。

 僕は「こりゃダメだ…」彼に気付かれないように小さい溜め息をつき肩を抱く彼の顔を見上げた。


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