彼は僕の荷物を持つと空港のレンタカーカウンターへ向かった。

 「せっかくケイタロウが来てくれたから、福岡観光したあと、黒川温泉に一泊で旅行に行こう。宿は取ってあるから」
 僕の肩を抱き頬にキスをして言った。

 レンタルした小型の乗用車に乗り込むと、彼は僕をギュッと抱きしめ甘いキスをずっとしてくれた。

 「ケイタロウ。逢いたかったよ」
 
 抱きしめてくれる彼の体に腕を回し僕もきつく抱きついた。

 「さて、どこ行きたい?」
 「福岡に来るの10年以上ぶりだからよくわからないよ」
 「それじゃ、太宰府天満宮でも行くか?」
 「あーそれ聞いたことある。行ってみたい」
 「じゃ出発!」
 
 彼は車を走らせ太宰府へと向かった。

 余りにも有名な太宰府。菅原道真公のお墓の上に建てられた社殿。学業の神様として多くの受験生が合格祈願に訪れる。

 駐車場に車を停め、太宰府までの参道を、彼はずっと僕の肩を抱き寄せぴったりとくっついたまま参道を歩いた。

 途中、参道にあるお店で名物である梅ヶ枝餅を買い、土産屋を冷やかしながら社殿へ向かう。立派な社殿までくると、彼は財布から小銭を出し、賽銭を投げじっと祈っていた。

 僕も同じように賽銭を投げ、彼と並び手を合わせ目を閉じた。

 「なぁ、ケイタロウ。何お願いしたんだ?」
 「ん?ヒミツ」
 
 彼はプゥっとふくれっ面をして僕を睨むと、僕の首に腕を回し抱き寄せると耳元で教えろと言った。

 「ずっと一緒にいられますようにって」
 「俺もだよ」彼はニッコリ笑い僕の頬にキスをする。
 「でもここ、学業の神様でしょ?かなりお門違いなお願いだよね…」
 「大丈夫だろ。神様は何だって叶えるから神様って言うんだ」
 「なんか強引な気が…」

 参拝を終え、再び参道を戻ると、時間も昼時。

 「昼メシ何が食べたい?」
 
 福岡といえば、明太子、博多ラーメン、もつ鍋、水炊き。まぁ、僕はこのくらいしか福岡のおいしいものを知らないのだが。

 あれこれ逡巡した後、

 「もつ鍋を食べてみたい」
 「よし。それにしよう」

 彼が福岡に来た際、九州支社の人達が歓迎会をやってくれたというおいしいもつ鍋屋に向け車を走らせた。

 彼が連れてきてくれたもつ鍋屋さんはとてもおいしくて、何度もモツをおかわりし、最後にはラーメンを入れて締め、僕は大満足だった。

 食後にデザートを食べていると、彼が言った。

 「突然こっち来るっていうからビックリしたよ」
 「うん」
 「さみしくて逢いたくなった?」彼はからかう様な目で僕に言う。

 「さみしくなかった?」いつだって僕は素直にウンと言えず、こうやって彼に聞き返した。そんな僕に対し彼は自分に正直で素直だった。
 「メチャメチャさみしかった。毎日お前の事ばっかり考えてた」
 
 「さみしくて我慢出来なくて来ちゃった」僕がポツリと言うと彼は優しい笑顔で僕の頭をクシャクシャと撫でた。

 お腹も膨れたところで店を出て、車に乗り込むと彼は僕を抱きしめキスをした後、

 「早く二人きりになりたい」
 僕が黙って頷くと、彼は車を一路、熊本の黒川温泉へ向けて走り出した。

 

テーマ:同性愛・両性愛 - ジャンル:恋愛






 何故か自分でもよく解らないが、人付き合い(人間関係)について相談事をされることが多い。僕自身、取り立て際だった知識があるわけでもなく、大して聞き上手でもない。自分の考えを上手く人に話すことも得意な方では無い。

 僕自身が理系人間だからかどうかは解らないが、何か問題があるとき、必ず原因があって、プロセスがあって結果があると思っていた。

 何を言っているかと?思われる方もいらっしゃると思うのだが、相談事の話を聞いていると、

 「なんでこうなったか理由がわからないの…」
 「理由なんて無いよ」

 そう話す人が結構いる。

 単に理由を探すことが面倒なだけで、こう言っているのかと最初は思っていたが、話を聞いてみるとそうでなく、本当に理由がわからない様子。

 僕は基本的に人付き合いが余り得意でない。それは、自分がゲイであることを隠して生きているし、深く付き合うことによって、そういった自分の見せていない部分を見られてしまうことの恐怖からか、限られた人との付き合いとなる。

 だからあまり人の好き嫌いが発生しない。言い方は悪いが、多少希薄な人間関係の方が僕にとっても都合がいい。

 僕自身が人付き合いについてこういったスタンスだからなのかどうかは不明だが、ケイタロウには話しやすいと言われることが多く、最初に述べたように、相談事をされることが多い。

 相談事の内容はいろいろあるが、最近多いのは離婚。

 何度かこのブログでも書いた田舎の兄貴夫婦の話もそうだが、僕の周りではどうも結婚して10年前後でダメになるパターンが多い。

 そんな離婚の相談を持ちかけられる。時として旦那と嫁から別々に。

 僕自身、彼と結婚はしたが、これは僕と彼との間での約束であって、世間一般に言う結婚とは違う。

 好きで結婚しても所詮は赤の他人。1から10までマッチするなんてあり得ないし、我慢も必要だと思っていたが、どうもそういう事を抜きにして、理由もわからずどうしても自分の気持ちをコントロール出来なくなってしまう人が多いようだ。

 「何がダメなの?」
 「わからないの…」
 「そんな理由もわからず、離婚なんてするものじゃ無いと思うんだけど…」
 「でもどうしてもダメなの…」

 こんな押し問答を繰り返すばかり。

 相手が嫌いになったわけでもないし、不満が無いとは言えないが許容範囲。それでもダメだと言う。僕には???訳がわからない。

 前に人から聞いたことがある話。

 人を好きになって恋愛が始まる。「恋愛」の恋がとれて「愛情」となり結婚する。そして、最後は「愛情」の愛がとれて情が残る。これが結婚生活の全てだと。

 この話を聞いて、僕はなるほど、巧いことを言うなぁと関心した。もちろんずっと愛が生き続け、愛情のまま終わることもあるだろうが。

 相談してくる彼らは、今、この話のどの辺にいるのだろう。少なくとも結婚はしているわけだから、愛情と情の狭間なのだろうか?この愛が薄らぎ情が残る。この過渡期なのではないか?と思うことが多い。

 過渡期はとかく苦しく、我慢の時。僕は受け売りだが、この話をすることが多い。過渡期というものは辞書で調べると「古いものから新しいものへと移り変わっていく途中の時期」

 二人の暮らしが新しいものへと変化している最中。気付かないうちに少しずつ気持ちに変化が訪れ、その変化の理由がわからない。そこに戸惑い、結論を急いでしまうのではないのだろうか?ここを乗り越えて、変化が止まったとき、改めて考え、結論を出すのでも良いのではないか?

 変化の途中で投げ出してしまうのは、吉と出るか凶と出るかのチャンスを自ら放棄することで、吉と出た場合の幸せ見ることなく、自らの手で終わらせてしまうこと。

 僕も彼と一緒に暮らし、付き合い始めた頃の恋愛にありがちなドキドキ感が薄れ、好きだなぁという愛情に変わり彼と一緒に暮らした。一緒に暮らしてみると、僕の知らない彼のいろんな面が見えた。きっと彼も僕の知らなかった面をたくさん見ただろう。

 受け入れられる面もあれば、出来ない面もあったに違いない。それでも僕は幸せに暮らすことができた。彼とこの先何十年も暮らしていくうちに、愛情の愛が薄れ、情に変わったかも知れない。そんな未来のことなんて誰にもわからない。ただ、こんな風にしたい、こんな風になったらいいなという未来の話をすることはとても大切だと思う。

 そんな話をする彼らたちはお互い二人の未来について話し合ったことがあるのだろうか?世知辛い世の中、そんな話をしても意味が無いなんて言わず、雑談でもなんでもいい、ちょっと先の話をしてみるのも良いのではないだろうか。

 彼はよく未来の話をした。ちょっと先の未来の話、ずっと先の未来の話。それこそくだらないことや思いつきで言っていることも多かった。

 朝起きてすぐ、
 「なぁ、ケイタロウ。今日の晩飯、焼肉いかね?」
 「朝食もまだ食べてないのに、もう夕食の話?気が早いね…」
 「なぁ、焼肉行こうよ〜」
 「わかったよ」

 二人で出掛ける途中の不動産屋の前で、
 「なぁ、これから先もずっと一緒に暮らすんだからマンション買おうか?」
 「えっ?!」
 「結婚したんだから、買ってもいいだろ」
 「そうだねぇ」

 夜のベッドの中で
 「ケイタロウ、30年後の俺とお前ってどうなってるんだろうなぁ?」
 「また随分と先の話だねぇ」
 「お前と一緒にいるだろうなぁ」
 「どうだろ?わかんないよぉ〜」
 「おい!俺を捨てるのかよっ!」
 くだらないけど嬉しかった。でもこの日の夜は、僕のこの曖昧な返事のため、彼は僕を問いつめ、なかなか寝かせてくれなかったことを思い出す。

 そんな、具体的なことでなくていい、馬鹿馬鹿しくてもいい、そんな相手が考えている未来に、自分がいるかどうか。好きになって結婚した二人。きっと未来を見つめたとき、そのそばに彼が、彼女がいると僕は思う。

※次回は福岡の続きを書きたいと思います。


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