6月に入り東京もそろそろ梅雨入りかな?と思わせるようなぐずついた天気が多くなって気がする。

 湿気が多く、なんとなくベタベタするこの季節が好きという方はあまりいないだろうと思う。

 「おい、今日は夕方から雨になりそうだから、傘持ってけよ」
 「うん」
 
 実家に用事があり身支度をしている僕に彼が言った。

 「折り畳み傘、玄関に出しておいたから」
 「ありがと」
 
 バスルームからリビングに戻ると彼はソファにひっくり返ってテレビを見ていた。

 「行ってくるね。晩ご飯までには帰るから」
 「わかった。気を付けて行ってこいよ」

 そう言って彼は両手を広げた。僕は広げた両手の中に飛び込むと彼はギュッと僕を抱きしめ長いキスをしてくれた。

 一人電車に揺られ実家に向かう。彼と一緒に暮らし始めてから実家に行くことが少なくなった。そんな僕に母親は親戚が来るからたまには顔を出せと言った。

 電車に乗っていると彼から携帯にメール。

 「お前、傘忘れただろ〜」

 あっ!そうだった。玄関に出しておいたから持って行けと彼に言われていたことをコロッと忘れ、家を出てしまった。

 電車の窓から空を見上げると、やや薄暗い雲の合間に青空もチラホラ見える。

 「大丈夫そうだよ。青空もちょっと見えるよ」

 そう打って僕は送信ボタンを押す。すると、間髪入れず

 「午後から降るんだよ!」
 「実家の傘持ってくるから大丈夫」

 実家に戻り、久しぶりに会う親戚連中。お昼ご飯を一緒に食べ、軽く酒も飲んだ。夕方には家に帰りたかったので、酒もそこそこ。

 夕方になり携帯を見ると彼からのメールが来ていた。

 「さみしいから早く帰ってこい」
 
 このメールを見て、僕はいそいそと帰り支度を始めた。愛する人が家で僕の帰りを待っている。

 「そろそろ帰るわ」
 「そう?晩ご飯も食べていけばいいのに」
 「いや、ちょっとこれから約束あるから」
 
 親戚連中に挨拶をして、僕は実家を後にした。実家の玄関を出て空を見上げると、降りそうで降らない微妙な天気。まぁこれくらいなら家まで大丈夫だろうと思い、傘を借りずに駅に向かった。
 
 駅に着き、彼にメールを打った。「今、駅だからこれから電車乗って帰るね」

 電車に乗るとすぐ雨が降ってきた。しかも結構、本降りな雨。

 実家の最寄り駅から彼の家の最寄り駅まで約30分くらい。その間に雨が止むことを願ったが、ささやかな願いは届かず駅に着いても雨…。

 駅から彼の家まで歩いて10分程度。このために傘を買うのはイヤだな…いいや走って帰ろうなんてことを考えながら改札を出ると、彼が待っていてくれた。

 「迎えに来てくれたの?」

 彼の元に小走りで行くと彼は黙って僕の頭に軽いゲンコツをした。

 「痛いなぁ」
 「全くお前は俺の言うことをどれだけ聞いているんだ?」
 「ごめんなさい…」

 しょぼくれた僕に彼は笑い、

 「さ、帰るぞ。晩飯はカレーだ」

 彼は傘を広げると僕の肩を抱き寄せ、一つ傘に入り歩き出した。
 僕は抱き寄せてくれた彼の頬にキスをして

 「ありがとね」
 
 彼はニヤッと笑っただけだった。
 雨が嫌いな僕だけど、彼と一緒なら好きになれそう。そんな気がした。


テーマ:同性愛・両性愛 - ジャンル:恋愛






 このブログを始めて1年が過ぎた。最近は仕事が忙しくなかなか思うように更新が出来ず、せっかく足を止めて下さる皆様には大変申し訳なく思っている。

 そしてこの一年、たくさんの方が寄り道をしてくれて、とても嬉しく思っている。ありがとうございます。

 この一年、本当にたくさんの方からコメントやメールを頂き、たくさんの考え方、たくさんの感じ方、たくさんの生き方を教えてもらうことが出来た。

 皆さんが日々暮らすこの世の中で、人それぞれいろんな出来事があり、喜びや悲しみ、怒りなどいろんな思いをされている人がいて、そんなやり場の無い思いをこのブログを読むことで緩和することが出来ると言って下さる話を聞いてとても嬉しく思う。

 そんなコメントを頂いたとき、誰もが時として感じるそんなささくれてしまった気持ちを癒すのは、僕が書いた文章ではなくて、きっと彼が僕にしてくれた優しさが、読んで下さっている方にも伝わっているのではないかと思っている。

 僕はこの彼の愛を一心に受け、優しさをひとりじめ出来たことを本当に幸せだと思っている。彼は自分の全てを僕に傾けてくれた。何があっても僕を一番に考えてくれ、自分のことはいつも二の次だった。

 一緒に暮らし、毎日毎日顔をつきあわせ、24時間一緒にいる。これだけ一緒にいるのだから時として煩わしいと思ったり、一人になりたいなどと思ったりすることは誰にだってあると思う。でも、本当に、僕は彼と一緒にいて一度だってそんな風に思ったことは無い。これは胸を張って言える。それくらい彼を愛していたし、彼もまた、毎日毎日どんどんお前の事を好きになると言ってくれた。

 一年経って思うこと、それはまだ彼を愛しているということ。彼を失った当時は悲しみに暮れ、ただただ死んでいるみたいな生き方だった。失ったことを彼のせいにして、自分を正当化してみたり、そして悲しみになんか負けない、今まで一人で生きてきてそれが元に戻っただけなどと意地になって、無理に彼のことを忘れようとしたころもあった。

 それも今思えば、僕の事をあれほど愛してくれた彼を忘れられる訳などないのに、それを無理に忘れようとしたのは、自分の弱さでしかなかった。
 そして、悲しみに負けないなんて意地は、それを認めたくないというただの強がりでしかなくて、あのころの僕は前にも進めないし、振り返ることも出来ないというどうしようもない状態だった。

 そんなどうしようもない僕なのに、彼は僕のどんな悲しみにも喜びにも心を重ね、僕と共に泣き、笑ってくれた。

 僕は弱くてずるくて自分の事がキライだ。そんな僕に彼はいつももっと自分に優しくなれと言った。そして、

 「お前が自分自身のこと嫌いでもいい。俺が自分の事を嫌いだと思う以上にお前を好きになるから」

 僕は彼と出会ってから、彼に愛されたいとずっと思い続けてきた。でもその先が怖くてずっと目を背けてきた。僕は愛されなくても彼が近くにいるだけで満足しなければダメだと自分に言い聞かせてきた。でも彼は僕とは違った。

 「お前の近くにいるだけじゃ、お前の温もりは手に入らない。だから俺はお前をどうしても手に入れたかった。どんな手を使っても手に入れたかった」

 そんな強い想いで僕を抱きしめてくれた彼。

 大切な彼との想い出とこれからも生きてゆく。そしてこの今を僕は歩いている。

 そっと悲しみに寄り添う。そんな生き方が少しだけ、本当に少しだけこのブログを始めたことによって出来るようになった。
 そして、いつの日か全てのことが受け入れられる自分になれる気がする。

 ここに寄り道して、いろんな事を伝えてくれる皆さんがいるから。

 ケイタロウ


テーマ:同性愛・両性愛 - ジャンル:恋愛







| HOME | Next

Design by mi104c.
Copyright © 2009 男が男を愛するとき−When a Man LOVES a Man, All rights reserved.
FC2ブログ ホテル