先週、日本を縦断するように進路を進めた台風18号。東京も雨、風ともに凄かった。朝の通勤電車も大幅に送れ、いざというときの首都圏交通網の弱さを垣間見た気がした。
東京に限らず、このブログを読んで下さっている方の中に台風被害に遭われた方がいませんようにと切に願っている。また、被害に遭われた方がもしいらしたら、心からお見舞い申し上げ、一日も早く元の生活に戻れることを祈っている。
職場の朝のミーティングで上司から
「今日は夕方から台風が関東に上陸する可能性が高く、交通機関が麻痺する可能性が高い。定時を気にすることなく、各自判断で帰宅してくれ」
との伝達があった。
僕がいた情報処理部は、サーバー室が地下にあるため、外がどんな天気なのか全くわからない。室温もサーバーの熱暴走を防ぐため一年中一定の温度に保たれている。
僕はプログラム修正の為、朝からずっとサーバー室に缶詰だった。ノートPCを持ち込みプログラムと格闘していると、彼からのメッセージが入った。
『ケイタロウ。今日は台風だから定時を無視して、さっさと帰れって話聞いた?』
僕は朝のミーティングで上司が話していたことを思い出し、彼に返事を送った。
『うん。聞いてる。天気悪くなってきてる?今、地下のサーバールームだから全然外の様子がわからなくって』
『かなり空が暗くて風が強くなってきてるよ。一緒に帰ろ。』
『今、サーバーテスト中だから帰れないんだよ…』
『どれくらいで終わるの?』
『オラクルのログ吐き出し終わるまでは帰れない。あと2時間くらいかかると思う』
※オラクル=米国のオラクルコーポレーション社のデータベースソフトウェアのことで総称というか略してオラクルと言われることが多い(と思う)
『僕も終わったらすぐ帰るから先に帰っていてよ』
『お前が心配だから待ってる』
『大丈夫だよ。今日は家でご飯食べよ。悪いんだけど買い物して帰っててよ』
『いや、待ってる。飯なんて外で食ってもいいし、デリバリーでなんか取ってもいいだろ』
言い出したら絶対に聞かない彼。これ以上言っても絶対帰らないだろうから、
『わかった。ログ出し終わったらすぐ連絡するよ』
『了解!』
システムの処理は順調に終わり、
『終わった〜』
『それじゃ15分後にいつもの店で』
仕事場から一緒に帰るとき、いつも彼と待ち合わせをしていたコーヒーショップ。職場の誰も僕たちが一緒に暮らしていることは知らない。だから人目につかない場所でいつも待ち合わせて一緒に帰っていた。
待ち合わせのコーヒーショップに行くと彼が待っていた。
「おつかれさん。大分天気が荒れてきたから早く帰ろう」
「うん」
僕は彼が飲んでいたアイスコーヒーの残りを一気に飲み干し、彼と一緒に店を出た。
駅に着くと、強風のために電車が徐行運転らしく、ダイヤが大幅に乱れていた。駅のホームには台風のために帰宅を早めた人たちが溢れかえっていた。
「電車、動いてないみたいだね…」
「遅れてるだけだよ」彼は電光掲示板を見て僕に言った。
しばらくごった返しているホームで待っていると、満員電車がホームに入ってきた。
僕と彼は人並みに押されるように電車に乗り込む。朝の通勤ラッシュをもっとひどくしたみたいにギュウギュウの車内。
どうにも身動きすら取れない車内で、彼は僕のカバンと自分のカバンを肩に掛け、僕をギュッと抱きしめ、周りの人たちから守ってくれた。
僕は彼の胸にギュッと抱きしめられたまま、彼のベルトに手を掛け、彼の胸に顔をぴったりくっつけて立った。
「大丈夫か?」
「うん」
彼の顔を見上げ言うと、彼はまたギュッと僕を抱きしめてくれた。
彼の胸に顔を埋めると、彼の匂いがした。
電車が僕たちの降りる駅に着いたが、なかなか電車から降りられない。彼は僕の腕をしっかり掴んだまま、ずんずん人並みを押し分けホームへ降りた。
「ふー。やっとついたな」
彼の顔を見ると汗っかきな彼。額が汗で濡れていた。
「ありがとね」
僕は彼の額の汗を手で拭いながら言うと、彼はニヤッと笑い、
「やっぱり待っていて正解だったな。お前じゃ絶対電車乗れても駅で降りられない」
「自分でもそう思うよ…」
「さ、いつもの店でラーメン食って帰るか」
「うん。ビールも飲もうよ」
「そうだな。喉がカラカラだよ」
彼は僕の肩を抱き改札へ歩き出した。
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