今年の夏に一時的に患者が増え、そのご少し落ち着いた感のあったインフルエンザだが、ここに来て一気に爆発の兆しが出始めている。

 このブログを読んで下さっている方の中にもひょっとしたら罹患してしまった方もいらっしゃるかもしれない。

 毎日のニュースでもインフルエンザの予防接種が追いつかないといった内容をよく目にする。

 そういう自分もここ2〜3日なんとなく調子が悪い。熱があるわけでも無く、喉が痛いわけでもないので騙し騙し仕事をしている。

 こんな時は残業も早めに切り上げ、健康ドリンクと一緒に風邪薬を飲んでさっさと寝る事にしたいが、現実はなかなかそうも行かない。


 彼はガタイはゴツくて、力持ちだったが、扁桃腺が弱く、風邪を引くと必ず高熱を出した。前にも書いたが、とにかく医者嫌い、薬嫌いから、僕と一緒に暮らすまでは確実に風邪を引くと悪くなるまで放置するという最悪のパターンを辿ることが多かった。

 僕と一緒に暮らすようになってからは、無理矢理、薬を飲ませ、医者に連れて行くことが多くなったのでそれほど悪化することは無かったがそれでも、毎年、冬に一度は高熱を出しダウンすることがあった。

 僕はあまり高熱が出ることがない。往々にして鼻水をタラーッと垂らし、ゲホゲホと咳が出る典型的な鼻風邪が多い。

 だから、高熱を出してぐったりしている彼を見ると、とても苦しそうで心配になった。高熱が出たときの為に冬場は常に冷凍庫のアイスノン(氷まくら)を凍らせておいた。

 彼は寝汗がひどく、夜中に何度も着替えさせて水分補給をさせる必要があるから彼が熱を出したときは僕はほとんど徹夜。

 彼が熱を出したら(出しそうな兆候がみられたら)僕は近くにあるスーパーまで自転車を走らせ、2リットルのポカリスエットなどのスポーツドリンク2本とうどんと卵を必ず買いに行った。

 スポーツドリンクは体内吸収が早く、ブドウ糖が入っているから良いと以前聞いたことがあったから、バカの一つ覚えのように毎回買っていた。

 そして彼はいつも風邪を引くと、僕の作るかき玉うどんを食べたがり、それを作るためにうどんと卵を買う。

 実際高熱が出ると、一晩で大体2リットルペットボトル1本飲みきってしまう。

 「起きて。寝汗でビチャビチャだから着替えるよ」

 夜中に眠っている彼を無理に起こす。かわいそうだがそのまま寝かせる訳にもいかない。怠そうに起きあがった彼のTシャツとパンツを脱がせ、タオルで汗を拭き、替えのTシャツとパンツをはかせる。氷枕を取り換えペットボトルを渡すと、彼は凄い勢いでゴクゴクと飲む。

 そして再びベッドに寝かせ、僕はリビングへ戻る。大体この繰り返しを一晩3回くらい繰り返し、朝を迎える。

 朝食にうどんを煮て、寝室に行くと彼が目を覚ましていた。

 「おはよう。うどん煮たけど食べられる?」
 「うん。腹空いた」

 パジャマのまま、リビングに来て、うどんをズルズルと勢いよく食べる。大体、この時の食べっぷりで調子がわかる。

 「だいぶ熱下がったみたいだね」
 「うん」

 「は〜そんじゃ僕はこれから寝るからね」僕は大きく伸びをして彼に言う。
 「仕事は?」
 「今日は休んだよ。夕べは全然寝てないんだから」
 「ごめん」
 「いいよ。元気になれば」

 彼は黙って僕を抱きしめ
 「お前と一緒になってから高熱が出ても一晩で収まるようになった。一人の時は2〜3日は熱が下がらなかったのに」
 「一人だとなかなかうまくいかないよねぇ」
 「ありがと。ケイタロウ愛してるよ」
 「どういたしまして。昼まで寝るね。なんかあったら起こして」

 僕はダラダラと寝室へ向かい、ベッドに入り眠りに落ちた。


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 昨日、今日と12月並の寒さで、朝、起きるのがつらい季節になってきたが、このブログを読んで下さっている皆様は如何だろうか?

 10月の中頃から仕事がにわかにバタバタしだし、11月に入るとかなりのピークを迎え毎日残業続きの生活をしてきた。まだ忙しさはあるが、山は越えた感がある。

 仕事の隙間をぬって文章を綴っている。こうしてただ書類の山に追われ、それを裁くことだけに気を取られている日常の中で、こうしてこのブログの文章を綴ることは自分にとっては何かホッと出来る場所となっている。

 僕の書いた駄文を読み、コメントを寄せて下さる。頂いたコメントは本当に何度も読み返す。読み返して書いて下さった方が今、どんなことを考えているのか?どんな気持ちでいるのか?どんな喜びや不安を抱えて生きているのか?どんな境遇で生きているのか。そんな事をコメントを何度も読み返し考える。

 そして、読んで下さっている方々も、少なからず僕に対する様々なイメージを持っている事がわかる。

 僕の事を「優しい」と思って下さっている方も多数いらっしゃる。ただ、僕は自分が皆さんが思って下さっているほど優しくないかもしれない。世知辛いこの世の中で殺伐と人を切り捨てることもしてきた。人を泣かせることもしたし、傷つけることも沢山してきた。

 自分を守るために人の事なんてどうでもいいと思うことだってある。ただ、その後には必ず自己嫌悪が僕を襲ってくる。そんな中で僕は人と付き合うことを怖がるようになっていた。

 毎日を過ごしている中で、様々な場面で思う。人を傷つけ、不快にさせる言葉が喉まで出かかる事も沢山ある。ゲイであるが故、自分をクローズドな環境に置かざるを得ない事情や、本当の自分を表に出せないストレスもある。ただ声に出さないだけ。グッと飲み込み自分の中で消化させる。でも消化出来ないものもある。そうやってたまった消化不良なものを吐き出すためにこうして時々ブログに書いたりする。

 こうしてブログに書くと、皆さんがコメントを入れてくれる。そのコメントを読むと、自分が一方向からしかモノを見ていないことがよく解る。何となく自分の気持ちの中でもやもやしていたモノが無くなることも沢山ある。

 だから僕自身、皆さんが書いてくれるコメントが生きるヒントになっていたり、諭しであったり、僕の生き方に、考え方にたくさんの影響を与えてくれている。



 夢を信じない。叶わない夢だってある。

 そんな風にどこか醒めている僕の持論をこのブログでも何度か書いた。けれどそんな僕が書く文章を読んで、夢を持ってくれる方々がいる。

 不思議だけれどこれが人なんだとも思う。色んな感じ方があって、色んな受け取り方がある。

 毎日の暮らしの中、雑事に追われただ過ぎゆく中で、ふとした瞬間に感じる未来への不安や焦燥感。僕だって意識の外に追い出そうとすることも沢山ある。僕はこれから先どうなっていくんだろう。三十路も半ばを過ぎ人生も折り返し。半分終わってしまったこの人生の残りを僕はどうやって生きていくんだろう。ベッドに入り天井を見上げながら眠れぬ夜を過ごすことだって多々ある。

 でも、この三十数年間生きてきて、感じたことは、

 生きてみないとわからないことばかり
 
 だった気がする。

 絶対に自分には訪れることが無いと思っていた幸せな暮らし。彼に出会うことだって当たり前だが出会うまでは全くわからない。そのまま先輩後輩の関係のまま終わったかもしれない。ただどこかで一瞬、何かがきっかけとなりドラスティックな変化が訪れることも事実。僕は彼に初めて抱きしめられた瞬間に何かが突き抜けた気がした。

 僕は叶わない夢もあることを公言しているから、夢を持とう。とか、希望を捨てるな。とかそう言った事は一切言えない。

 ただ、この世の中、生きてみないとわからないことばかり。

 何処で自分の生き方が変わるのかなんてこと、誰にもわからないし知りたくもない。良くなるのなら良いかもしれないが、悪くなるなんて事になったら怖くて生きた心地がしない。

 様々な事で悩み、不安を感じている。でもそんな悩みも不安もいつかきっと笑い話になるようなキッカケは生きてみないとわかならい。

 なんか安っぽい哲学のようになってしまったが、真理な気もする。

 相変わらずまとまりのない下手な文章で申し訳ない。上手くまとめられないのは毎度の事なので読んで下さる皆様も慣れっ子になっているかもしれないが…







 先日、学生時代から世話になっている先輩の結婚式に招待してもらい、出席してきた。かれこれもう17〜8年の付き合いで、今でもちょくちょく飲みに連れて行ってもらったりと頻繁に会う、僕にとってはとても大事な先輩の一人。

 是非、式から出席して欲しいと言って頂き、結婚式から参列させてもらった。

 ホテルのチャペルでの結婚式。他の参列者と一緒に賛美歌を歌い、心から祝福した。

 照れくさそうにヴァージンロードを歩く二人に精一杯の拍手をすると、二人は僕に微笑みかけてくれ、先輩の方は「ありがとう」と言ってくれた。

 誰もがそう思うと思うが、親しい人が結婚するとき、幸せになって欲しいと願う。これから先もきっと結婚することがない僕にとって、そして、彼と誰よりも幸せと思える季節を過ごしてきたからこそ、二人でいることの幸せを願わずにはいられない。

 続けて披露宴に出席した。招待客は少なく、ごくごく親しい人のみのアットホームな披露宴で、とても雰囲気のいいものだった。

 宴会芸でピアノを弾いてくれてと頼まれていた僕は、かなり緊張していた。同じテーブルに座った招待客に、緊張を解すためとビールを何度もついでもらい、ちょっと酔っぱらってきたころに、自分の出番が来た。

 少人数の披露宴だったためか、ピアノに合わせて歌を歌って下さる方もいて、とても楽しく弾くことが出来た。

 自分の出番が終わって、次の方が歌を歌われたのだが、その歌がとてもいい曲で、曲もとても優しく、歌詞もとても良くて聴いてジーンとしてしまった。

 ♪Butterfly 今日は今までの どんな時より 素晴らしい
  赤い糸でむすばれてく 光の輪のなかへ

  Butterfly 今日は今までの どんな君より 美しい
  白い羽ではばたいてく 幸せと共に

  思い出してるよ 君と出会ったころ
  何度も繰り返した季節は
  二人を変えてきたね

  君は今誓い 愛する人の側で
  幸せだよと 微笑んでる
  確かなその思いで 鐘が響くよ

  優しさにあふれた 君がとても大好き
  悲しみあれば 共に泣いて 喜びがあるなら 共に笑うよ

  たったひとつだけ 暖かい愛に包まれ
  夢の全ては いつまでも つづくよ

  運命の花を見つけた チョウは青い空を舞う



 一度聞いただけで、彼と過ごした時間の色々な出来事を思い出し、幸せな気持ちになりとても気に入ってしまった。僕はこの歌を歌った女性に話しかけた。

 「とってもいい曲でした。歌も上手でジーンとしてしまいましたよ」
 
 女性は照れたような顔でニッコリ笑った。

 「初めて聞いた曲なんですけど、誰の歌なんですか?」
 「木村カエラのButterflyって曲なんですよ」
 「へぇ〜」

 木村カエラさんの最近リリースしたアルバムに収録されていると彼女に教えてもらい、僕は結婚式の帰りにこのCDを買って帰った。とてもいい曲なので、是非聴いてみて欲しい。

 まぁ、曲の話はまた後日として、結婚式もお開きの時間となり、新郎の挨拶を聞いているうちに感極まってしまった僕は、オイオイ泣いてしまい、本来なら最後の挨拶をしている新郎新婦にカメラのフォーカスが向くところであるが、先輩の結婚式でオイオイ泣いている僕の方が、被写体としてはおもしろかったのだろう。皆のフラッシュが僕の方に向かってバシバシと光った。

 僕はハンカチで目を覆い、オイオイ泣いている。
 周りはおもしろがり一斉に僕にカメラを向ける。
 一番おいしい部分をこんな三十路半ばの泣き虫独身男に持って行かれた新郎新婦。

 お開きの時、扉の前で招待客の見送りをしている新郎新婦。僕は目を真っ赤にしつつも引き出物はしっかり持って、新郎新婦の前に行くと、

 「一番の見せ場を持って行きやがって」と新郎の先輩は笑いながら僕を睨んだ。奥さんとなった新婦は、「結婚式でケイタロウ君みたいにワンワン泣いちゃう人初めて見たけど、嬉しかったよ」と言って下さり、なんとか許してもらえたようだ。

 そういや、田舎の兄貴の結婚式でもオイオイ泣いた記憶が…。

 どうもこういった人の幸せを心から祝う席は苦手である。







 ここのところ再び仕事が忙しく更新がかなり停滞してしまっている。ポツポツと折りを見て更新していくつもりでいるので、ご容赦頂きたい。

 先日、使っていた携帯電話が壊れてしまった。既に3年近く使っており、気に入っていたが、いかんせんそろそろ機種変更したら?という周りからの勧めもあり、思い切って機種変更した。

 それにしても機種代金4万円は痛い。昔の感覚でいるからか、携帯電話は1円で買えるものという変なイメージがあるせいか、かなり割高感を感じてしまった。

 しかしながら新しいものはやはりいい。僕は理系の人間なので、かなりこういったいわゆるデジモノというものが好きだ。それに分厚いマニュアルなどを読むのも苦にならない。

 これに対し、彼は数式に拒絶反応を示す根っからの文系人間。システム系、メカ系、そして分厚いマニュアルに激しく拒絶反応。

 「なぁ、これどうやってやるの?」
 「このボタン何?」
 「ケイタロウ〜パソコンがフリーズした〜」

 その度に僕は彼の元へ。

 「もう!マニュアル読みなよ!」
 「…」

 彼は渋々マニュアルを開く。

 「なぁ、これどういう意味?」
 「これって何言ってるの?」
 「これ、なんて読むの?」

 今度はマニュアルの専門用語がわからず質問攻撃。

 彼の質問攻撃に閉口して、結局僕が作業する。デジタル機器に関しては大体こんな感じだった。彼が買った携帯電話も、パソコンも設定と使い方をはじめに僕がマスターして、彼に教える。

 たまにテレビなんかで見かける、彼氏の携帯電話を彼女がコッソリチェックして、
 「何なのよ!この女!」みたいな事は彼と僕の間では絶対に起こらない。

 「ケイタロウ〜。ケータイのメールボックスがいっぱいになったから削除して〜」

 なんて携帯を握りしめて僕の所にやってくる。それで僕がポチポチッとボタンを押して削除する。そんな時でも、

 「このメールは削除して、これは削除しないで」なんて横から口を挟んでくるくらいだから、プライベートもヒミツもヘッタクレも無い。

 「ねぇ、携帯電話みたいに個人性の高いモノを人に見られて平気なの?」
 「別にぃ〜。お前に見られて困るもんなんて何もないし…お前はあるの?」
 「無いねぇ…」そう言いながら自分の携帯電話を彼に渡すと、

 「渡されてもお前の携帯、操作方法わからないよ」

 僕はメールのボタンを押して彼に渡す。

 「なぁなぁ、この俺の名前が書いてあるフォルダみたいなの何?」
 「あぁ、それは(彼からの)メールが自動的にそこに保存されるように設定してるんだよ」
 「へぇ。それいいね。俺の携帯でも出来る?ケイタロウからのメールだけをためるようにするの」
 「出来るんじゃない?」
 「やって」
 「ええぇ〜面倒くさいよ…」

 結局、彼のゴネに負け、彼の携帯メールの8割を占める僕からのメールを一つずつ選択しフォルダを分ける作業をする羽目に…。

 自分で送ったメールを自分で仕訳する作業にバカバカしさを感じつつ、どんだけ僕は彼にメールを送ってるんだ…と自分に呆れた。


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 先週、日本を縦断するように進路を進めた台風18号。東京も雨、風ともに凄かった。朝の通勤電車も大幅に送れ、いざというときの首都圏交通網の弱さを垣間見た気がした。

 東京に限らず、このブログを読んで下さっている方の中に台風被害に遭われた方がいませんようにと切に願っている。また、被害に遭われた方がもしいらしたら、心からお見舞い申し上げ、一日も早く元の生活に戻れることを祈っている。



 
 職場の朝のミーティングで上司から
 「今日は夕方から台風が関東に上陸する可能性が高く、交通機関が麻痺する可能性が高い。定時を気にすることなく、各自判断で帰宅してくれ」

 との伝達があった。

 僕がいた情報処理部は、サーバー室が地下にあるため、外がどんな天気なのか全くわからない。室温もサーバーの熱暴走を防ぐため一年中一定の温度に保たれている。

 僕はプログラム修正の為、朝からずっとサーバー室に缶詰だった。ノートPCを持ち込みプログラムと格闘していると、彼からのメッセージが入った。


 『ケイタロウ。今日は台風だから定時を無視して、さっさと帰れって話聞いた?』

 僕は朝のミーティングで上司が話していたことを思い出し、彼に返事を送った。

 『うん。聞いてる。天気悪くなってきてる?今、地下のサーバールームだから全然外の様子がわからなくって』
 
 『かなり空が暗くて風が強くなってきてるよ。一緒に帰ろ。』

 『今、サーバーテスト中だから帰れないんだよ…』
 『どれくらいで終わるの?』
 『オラクルのログ吐き出し終わるまでは帰れない。あと2時間くらいかかると思う』
 ※オラクル=米国のオラクルコーポレーション社のデータベースソフトウェアのことで総称というか略してオラクルと言われることが多い(と思う)

 『僕も終わったらすぐ帰るから先に帰っていてよ』
 『お前が心配だから待ってる』
 『大丈夫だよ。今日は家でご飯食べよ。悪いんだけど買い物して帰っててよ』
 『いや、待ってる。飯なんて外で食ってもいいし、デリバリーでなんか取ってもいいだろ』
 
 言い出したら絶対に聞かない彼。これ以上言っても絶対帰らないだろうから、

 『わかった。ログ出し終わったらすぐ連絡するよ』
 『了解!』

 システムの処理は順調に終わり、

 『終わった〜』
 『それじゃ15分後にいつもの店で』

 仕事場から一緒に帰るとき、いつも彼と待ち合わせをしていたコーヒーショップ。職場の誰も僕たちが一緒に暮らしていることは知らない。だから人目につかない場所でいつも待ち合わせて一緒に帰っていた。

 待ち合わせのコーヒーショップに行くと彼が待っていた。

 「おつかれさん。大分天気が荒れてきたから早く帰ろう」
 「うん」

 僕は彼が飲んでいたアイスコーヒーの残りを一気に飲み干し、彼と一緒に店を出た。

 駅に着くと、強風のために電車が徐行運転らしく、ダイヤが大幅に乱れていた。駅のホームには台風のために帰宅を早めた人たちが溢れかえっていた。

 「電車、動いてないみたいだね…」
 「遅れてるだけだよ」彼は電光掲示板を見て僕に言った。

 しばらくごった返しているホームで待っていると、満員電車がホームに入ってきた。

 僕と彼は人並みに押されるように電車に乗り込む。朝の通勤ラッシュをもっとひどくしたみたいにギュウギュウの車内。

 どうにも身動きすら取れない車内で、彼は僕のカバンと自分のカバンを肩に掛け、僕をギュッと抱きしめ、周りの人たちから守ってくれた。
 
 僕は彼の胸にギュッと抱きしめられたまま、彼のベルトに手を掛け、彼の胸に顔をぴったりくっつけて立った。

 「大丈夫か?」
 「うん」
 
 彼の顔を見上げ言うと、彼はまたギュッと僕を抱きしめてくれた。

 彼の胸に顔を埋めると、彼の匂いがした。

 電車が僕たちの降りる駅に着いたが、なかなか電車から降りられない。彼は僕の腕をしっかり掴んだまま、ずんずん人並みを押し分けホームへ降りた。

 「ふー。やっとついたな」
 彼の顔を見ると汗っかきな彼。額が汗で濡れていた。

 「ありがとね」
 僕は彼の額の汗を手で拭いながら言うと、彼はニヤッと笑い、

 「やっぱり待っていて正解だったな。お前じゃ絶対電車乗れても駅で降りられない」
 「自分でもそう思うよ…」
 

 「さ、いつもの店でラーメン食って帰るか」
 「うん。ビールも飲もうよ」
 「そうだな。喉がカラカラだよ」

 彼は僕の肩を抱き改札へ歩き出した。



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